The.Six.star.Stories.3475

プニの章

「う、う〜ん」

ピョコッ!

何もない場所に彼は倒れていた。

「目が醒めたプね」

「プって・・・?」

「心配したプよ、独りぼっちは嫌だプぅ」

「へ?」

「プニぶ」

霞む景色に焦点があう。

見たことのない光のなか、目の前にいるのは男のシンボル女の玩具。普通なら美女が心配して覗き込んでいるものだろうに、夢だ夢。そう思ってもう一度目を閉じようとする。

「駄目プよ、死んじゃ駄目プぅ」

ピョコピョコ顔の上で飛び跳ねる。

「プニキィィィック」

びょぉぉぉん、ぷにゅぅ。

顔の上から飛び上がると真っ逆さまに落ちて来た。

「うわぁっ」

どんぐりまなこの彼は不満そうに立っていた。

「やっと起きたプね、プニが命の恩人だプよ」

「う・・夢かなぁ」

「寝ぼけるなよあんぷ、プニだプぅ」

「き、君は?ここはどこなの?」

「ププ?、プニはプニブ。あんぷ覚えていないプか?ぼけるには早いのプ」

「・・・」

「でもプニもここがどこか知らんプニ」

「・・・」

「どこから来たのかプ。気がついたらアンプの頭の上で寝ていたのプよ」

「・・・」

「今日もどこかでデビルプニプゥ、明日もどこかでデビルプニプゥ」

彼も彼も記憶が飛んでいるみたい。目を丸くしている。

シュ〜〜乾いた風が無常に流れていった。

「俺は・・・ひ・ろ・か・ず・・・分からない」

「あんぷは[ヒューロ・クァーズゥぅぅぅ]、ププ」

この子も勘違い。

どうしてちんちんが喋るんだろう。夢か悪夢だ。

彼も起き上がって身体の埃をパンパンと叩く。

「ゴホンプゥ」

埃にプニがゴホゴホむせている。

「ご、ごめんよ」

『何かが呼んでいた気がする。何かを呼んでいたんだ。何かを追いかけていた』

そっと抱き締めて肩の上に乗せてやる。

お互い身体は元気でどこも痛くも痒くもない。

「ププぅ、どこ行くのぷ?」

「う〜ん、どうしよっか」

 

天空殿内乱 エピローグ1

AQUARIUS 3475

波が高く、低く重い灰色の空に飛沫をたてる。

「大気の精霊達がざわめいています」

侍女の言葉に女王は小さく頷いて遠い空を眺める。

「ついに彼が降臨なされたのですね」

「ブリュンヒルデ」

森閑とした大理石の神殿に刺しこむ光がドレスの貴婦人を照らし出す。まるで聖母のように穏やかな微笑みをたたえた神々しさをまとった女性。

「強すぎる光をこの星にいても感じますもの・・・」

娘?女性が波打つブロンドの髪を軽く指でといて聴いている。

「ブリュンヒルデ、貴女はお父上の所へお行きなさい。シェーンブルンへ」

「はい、エリュア母様」

「今まで星団だけでないわ、あらゆる時間の大河のなかで光であり闇であった伝説の男ヒューロ。時の旅人、聖騎士、灰色の魔神・・・ナイトオブジョーカー・・・その総てがあの方の影で幻だった。別の次元におられた魂が見ていた夢の姿」

「とうとう本体が出現なされたのですね」

「ですが神の残照としての魂は封じられたままでしょう。でも肉体がお出ましになられたということは、時が満ちつつあるということです。その過程でこの肉体は滅びるでしょう」

「え?」

「真のヒューロ・クァーズが復活されるのですから・・・」

「私、あの方を探しに出ます」

千年女王エリュアの涙を見逃さなかった。

時代が本当の意味で動くのだろうか。

救いなど存在しない時代。希望を授ける化身として。

光と闇がぶつかり混じりあって時は流れてきたという。最終戦争の扉を開く鍵となるのだろうか。その時人類は、生命はどうなるのだろうか。宇宙そのものが終わるのか。

天使と悪魔が、精霊使いの覇権による理想郷が生まれるのか、人智を越えた争いの後に何が残るのか、何が生まれるのだろうか。この日、千年女王配下の封じられた騎士達、ミレニアム・サイレンが出撃している。

時に天照帝率いるAKDが第四太陽系ノウズへの大侵攻を決定した日である。

 

何も分からないヒューロとプニは、

「とりあえず砂漠の中とかじゃなくてよかったプねぇ」

「そぉだねぇ」

泉で水浴びして日光浴していた。

別に急ぎの何かがあった気もしない。

どこかで鳥の鳴き声が遠くなる。太陽はまだお昼位か。

「なんでプニは僕のこと[あんぷ]って分かったの?」

「分からんプー」

何とかなる、そんな気がしていた。変な生き物(分身)といると記憶なんてこれから作ればいいんだ、今生まれたんだと思う。本当にそうなのかもしれない。生理的成人状態で誕生した。母親の腹からでなく大地と天空の間の子供かも。

「すいっちょんプー、かわいいプー、 あいしてるプー、ウププのプー」

ヒューロの肩、いや胸ポッケから顔を出しているプニは青空見上げて気持ちよさそうに身体を揺らして歌っていた。歩いている彼も満更ではなさそうで指を鳴らしてリズムをとっている。どうも右手より左手の方が指の鳴りがいいらしい。

「プニちゃん」

「なぁにプー」

「その歌は何の歌なの?」

「知らんプ」

「何で?唄ってるやんか」

「プニの魂に刻まれたメッセージプよ、きっと」

「訳分からん奴やなぁ」

プニはどんぐりまなこをくりくり、星屑をきらきら浮かべてヒューロを見上げている。

「今日もいい天気だプねぇ」

のーてんきな生き物と彼の旅は始まったばかり。

「きっと今は離れ離れなのプ。いつか結ばれるプよ、きっとプぅ」

 

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