プロローグ
「サガ、聖域を頼む・・・」
今も忘れ得ぬ最後の言葉。これだけが、
暗黒に染まる別の自分に全てをわたさず自我を保てた支えだった。
よもや、最下級の青銅聖闘士が黄金12宮殿を突破してくるとは。
いや、それを望んでいたのは自分自身。
6名の黄金製闘士を失った。これから始
まる聖戦を前にして、相手が女神その人であったとしても聖域を預かった教皇としての失策以外の何者でもない。
だが、生き残ったものたちには可能性が無限大に広がるのを感じる。
13年間待ち望んだ裁きの瞬間が迫ってくる。
全てを白日の下にさらした。
復活した女神アテナが向かってくるのを感じる。
幼子だった姿とはうってかわり美しく成長された姿。
この姿をこそ彼は見たかったのだろう。
ア イオロス。我が友よ。
ながきに亘り溜まった膿は、強行的な手立てとはいえ処理してきた。
それが教皇の暗黒面と恐れられようとも。
ただ、我が物にしたかったわけではないのだ。
楽になれる。
逃れたいわけでもない。
そなたの元にいける。
いや、神を守り抜いたソナタと神をしい逆し様とした私では相見えることはかなわないな。
許してくれるか?
お前の託した聖域の浄化、そしてお前が
見守りつづけてきた少年たちは、12の宮殿を乗り越え、青銅に留まらない真の聖闘士として目覚めようとしている。
お前があの日アリエスを逃し託したこと。アリエスは見つけた様だな・・・
ただ一人目をかけていた白銀の琴座(ライラ)は失踪してしまったが・・・
総ては女神の歩く先に連なるのだろうな・・・
石段をゆっくり登ってくる足音が聞こえてきた。
ここに降りてくる途中、人馬宮に残された友の遺言を思い出しながら、片膝
をついてじっと待つ。
足音が止んだ。
「お待ちしておりました。」
そう、とても長い間待ち焦がれた。その来 訪を。
自らが追い出した存在であったのに。
「あなたは?」
とても不思議そうな瞳を向けるまだ幼さを残した少女。
だが放たれる芳香、凛とした強さは女神。
その日、13年間偽りの教皇として聖域を掌握してきた双子座のサガは自決。
真なる女神アテナが舞い戻ってきた。
新たなる聖戦の時が近い。
総ての物語は13年前に奏でられた。
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